
賃上げ促進税制、中小企業の判定方法を解説【2026】
この記事の要点
- 資本金1億円以下など3基準で中小企業者等か判定する
- 給与増加率は継続雇用者か全雇用者かで数値がぶれやすい
- 資本関係の見落としと集計範囲のズレが代表的な失敗例
結論:資本金1億円以下・従業員1,000人以下などの要件と、給与等支給額の増加率で判定する
賃上げ促進税制で「中小企業者等」に該当するかどうかは、資本金または出資金の額(1億円以下が目安の一つ)と、従業員数などの基準で判定します。そのうえで実際に税額控除を受けられるかは、前年度と比べて給与等の支給額をどれだけ増やしたかという増加率の計算で決まります。なお、この制度は年度ごとに要件や控除率が見直されるため、必ず最新の公式情報で確認する姿勢が欠かせません。
この記事は、中小企業の経営者や経理・総務の担当者が「自社は対象になるのか」「どこで計算を間違えやすいのか」を自分で一次整理できることを目指して書いています。最終的な適用可否や税額計算は、顧問税理士または国税庁・中小企業庁の公式情報で確認してください。

賃上げ促進税制とはどんな制度か
賃上げ促進税制は、企業が従業員の給与等を前年度より一定割合以上増加させた場合に、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から控除できる制度です。背景には、物価上昇に見合う賃上げを後押ししたいという政策目的があります。
制度は大企業向けと中小企業向けで要件や控除率の設計が分かれており、中小企業向けの枠は大企業よりも緩やかな増加率で適用を受けられる設計になっていることが多い点が特徴です。ただし具体的な増加率の基準や控除率は年度改正で変わるため、この記事では「判定の考え方」を中心に説明し、数値そのものは公式情報で確認する前提で読み進めてください。
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税制上の「中小企業者等」は、会社法上の中小企業の定義とは別に、税制ごとに資本金や従業員数の基準が定められています。賃上げ促進税制でおおよその目安となるのは次のような考え方です。
- 資本金または出資金の額が1億円以下であること
- 資本金を有しない法人の場合は、常時使用する従業員数が1,000人以下であること
- 大規模法人(資本金1億円超の法人など)に発行済株式の一定割合以上を保有されていないこと
この3点目の「大規模法人に支配されていないか」という部分を見落とすケースがあります。例えば資本金は1,000万円で中小企業の体裁でも、親会社が資本金数十億円の大企業で株式の大部分を保有している場合、中小企業者等から外れることがあります。グループ会社や持株会社の構成がある場合は、資本関係を一度整理しておくと安心です。
個人事業主についても、常時使用する従業員数などで中小企業者等に相当するかどうかの判定が行われます。従業員数のカウント方法(パート・アルバイトの扱いなど)は細かい規定があるため、判断に迷う場合は税理士に確認するのが確実です。

給与等支給額の増加率はどう計算するか
中小企業者等に該当すると分かったら、次は実際に控除を受けられるかどうかの計算に進みます。基本的な考え方は次の手順です。
1. 当期の「給与等支給額」(継続雇用者または全雇用者ベースで集計)を確定する
2. 前期の同じ範囲の給与等支給額を確定する
3. 増加額を前期の支給額で割り、増加率を算出する
4. 増加率が一定の基準以上であれば、控除の対象となる増加額に控除率を掛けて税額控除額を計算する
集計対象を「継続雇用者」に限定するか「全雇用者」で見るかによって、増加率が数パーセント単位でぶれることがあります。新卒採用や中途入社が多かった期は、全雇用者ベースだと増加率が実態より低く出たり高く出たりすることがあるため、どちらの基準で集計するかを早めに決めて、期中から給与データを整理しておくと計算がスムーズです。
控除率は、増加率の段階に応じて上乗せされる仕組みになっていることが一般的で、教育訓練費の増加や子育て・女性活躍支援の取り組みなどを満たすとさらに控除率が加算される設計が取られてきた経緯があります。この上乗せ要件は年度ごとに内容が変わるため、申告の年度に対応した要件を確認する必要があります。
判定でつまずきやすいポイント
実務では次のようなところで迷いが生じやすくなります。
給与等支給額に含める範囲の認識違い。賞与や残業代を含めるかどうか、役員報酬を除外する点などの線引きを誤ると、増加率の計算そのものがずれてしまいます。
前期の集計範囲とのズレ。前期と当期で給与計算システムの集計単位が変わっていたり、組織再編で人員の括りが変わっていたりすると、同じ条件で比較できていないことがあります。合併や事業譲渡があった期は特に注意が必要です。
資本関係の確認不足。前述の通り、親会社の資本金や持株比率によって中小企業者等の判定が変わることを見落とし、後から対象外と判明して控除を取り消すケースがあります。申告前に資本関係図を一度見直しておくと安心です。
申告書への記載漏れ。税額控除は確定申告書に必要事項を記載し、適用を受ける旨を明記しなければ受けられません。要件を満たしていても、記載を忘れると控除が適用されないことがあるため、申告書作成の最終チェックで確認する習慣をつけておくとよいでしょう。
判定や計算に迷ったときの進め方
賃上げ促進税制は、要件・控除率ともに年度改正の影響を受けやすい制度です。自社の決算期がどの年度の制度に対応するのかを含め、まずは中小企業庁や国税庁が公開している最新の資料で、資本金基準・従業員数基準・増加率の基準を確認することをおすすめします。そのうえで、実際の給与データを使った増加率の試算や、資本関係の整理、申告書への記載方法については、顧問税理士に相談しながら進めるのが確実です。
なお、この記事を運営するエスプリントは税務の専門家ではなく、データ活用やAI導入のコンサルティングを行う会社です。給与データや人員データの集計・可視化の仕組みづくり(表計算で手作業集計していた給与関連データをダッシュボード化して増加率を自動算出する、といった業務改善)に関心がある場合は、無料カウンセリングで相談を受け付けています。税制の適用判定そのものは税理士・公式情報で確認したうえで、データ整備の部分でお役に立てることがあるかもしれません。
まとめ
賃上げ促進税制の中小企業判定は、資本金・従業員数・資本関係という3つの基準で中小企業者等に該当するかを見たうえで、給与等支給額の増加率を正しく計算することが土台になります。増加率の計算は集計範囲のズレで誤りやすく、資本関係の見落としも起こりがちです。最終的な適用可否と数値基準は、申告年度に対応した公式情報と税理士への確認を通じて固めていくことをおすすめします。
よくある質問
- Q. 資本金1億円以下なら必ず中小企業者等になりますか
- A. 資本金基準を満たしても、大規模法人に株式の大部分を保有されていると対象外になることがあります。
- Q. 給与等支給額にはどこまで含めますか
- A. 賞与や手当の扱いなど線引きが細かいため、公式情報か税理士への確認が確実です。
- Q. 控除率はどのくらい上乗せされますか
- A. 教育訓練費の増加など上乗せ要件があり、年度ごとに内容が変わるため最新情報の確認が必要です。



